19.10.06

園の日常

<こどもの手紙…思いを表現できる子に>

文:長谷川美枝子

一学期のことです。

年長児の男の子A君と女の子Bちゃんが、
お弁当を食べる席のことで喧嘩になりました。
BちゃんがA君に「一緒に食べたい」と言ったのですが、
A君に駄目だと言われてしまい、泣いて怒っていたのです。
先生がA君に「どうしてダメなの?」と聞くと、
「なんか、ちょっといやなよかんがする」と言いました。
「それって、どういうこと?」と聞くと、
「ぼく・・・おこられるのとかいやや」と答えました。
女の子に
「どうしてそんなにおこってまで、A君とたべたいの?」ときくと、
「だって・・・わたし、Aくんのことがだいすきなんだから!」といいました。
それを聞いたA君は、びっくり。
「Bちゃん、ぼくそんなこと、ちっともしらなかったよ…」
Bちゃんがおこっていたので、
ぼくのことをすきだなんて、わからなかったと言いました。
そしてふたりのケンカは終わりました。
ケンカの後に2人が手紙のやり取りをしていました。
その日は結局空いている席がなくなり、
一緒に食べることができなかったので、
Bちゃんが先に手紙を書き、
それにA君が返事を書いていました。
写真は、その時の2人の手紙です。
二学期になり、こどもたちの関係は
より広く、深くなってきました。
あの時の二人も、ときどき喧嘩をしながらも、
うまく関係を築いているようです。
先日のことです。実習生が教えてくれました。
掘ってきたサツマイモの泥を落とし、部屋に飾って、
そこに名前の札をつけようということになりました。
A君がいま、まさに「さつまいも」と書こうとしているところへ、
Bちゃんが走ってきて、「わたしがかきたい」といいました。
でもA君はもう自分が書くつもりでいるので、
Bちゃんの言葉を無視をして名札にさつまいもと書きました。
するとBちゃんはくやしかったのか
「へたくそな字!」とさけび、
それに怒ったA君がBちゃんをペチッと叩いてしまったそうです。
「うわーん」と泣くBちゃんに対し
A君は「Bちゃんがぼくの字をへたくそって言ったから悪いんだ」
と言いました。
どうなるかなと心配しながら、
実習生は*見ないふりをして観察*していたようですが、
このあと、泣いて鼻水がでてしまったBちゃんが
「ティッシュ」というと、
A君がいそいで取りに行って、
ティッシュをAちゃんに渡してあげて、
喧嘩は終わったそうです。
この二人は自分の感情を、
言葉や文字で表現することができて、
本当にすごいなぁと思います。
派手な喧嘩をしながらも、
ちゃんとお互いの気持ちがわかって、
納得するまで話しています。
まだまだ、気持ちを言葉にすることが
とっても苦手なこどもたちもいます。
恥ずかしかったり、自信がなかったり、
なんて表現してよいかわからなかったり。。。
こどもの家はその練習の場です。
毎日毎日、子どもたちは周りの人の様子を見たり、
「こういうときは、こういえばいいよ」
と教えてもらったり、
うまく言えなかったときは手紙を書いたり、
手紙をもらったり、
文字が書けないひとは先生に書いてもらって、
という具合に、日々、練習しています。

*こどもの家の実習生は、「ジーっと見ないで、見ないふりをしながら観察する」ように言われます。ジーっと見られているのは、こどもにとって気持ちの良いものではありませんし、喧嘩の時に見ているのに助けてくれなかった!と思われてしまうかもしれないからです。赤羽先生はよく「猿山のサルだってジーっとみていたら怒ってとびかかってこようとしますよ。ジーっと見るのはこどもに失礼だから、上手な観察者になってくださいね」と話しておられます。

引用元:https://www.facebook.com/fukakusakodomonoie/posts/1179777492210388