モンテッソーリ教育は、こどもは自ら育つ存在と捉え、よく準備し整えられた「良い環境」をこどもに与え、こどもが自ら動き、選び、自由な環境の中で活動していくことで、自分自身を、そして子ども社会全体を成長させていく、環境による教育法です。

モンテッソーリ教育の考え方

それぞれ違う子どもたちのための教育法

年齢、月齢、性格、興味関心、特性、みんなそれぞれ違う子どもたちが、それぞれのやり方で成長していくことを支える最もふさわしい教育法の一つがモンテッソーリ教育です。多様な子どもたちが共に育つこと、そして個々が心を使い自分で考え、小さな自己実現をたくさん経験していくことこそが、日々の生活に必要です。それがこどもが将来自分自身の人生を歩んでいくうえで欠かせない精神発達へとつながるのです。

子どもを正しく理解する

こどもの内には成長の設計図があり、こどもは自らの内側に持つ“羅針盤”に従って活動します。しかし、大人の価値観に振り回されたり、強制されたり、抑圧されたり、忙しすぎる生活をしていたりすると、子ども自身が自分の内面の羅針盤がどちらを向いているのかさえわからなくなってしまいます。「無気力」「やりたいことがない」若者たちは苦しんでいます。大人はこどもの周辺部には手をかけお世話できますが、中心部はこどもの、その子だけの大切な部分であって、たとえ親であっても土足で踏み入ってはいけません。

自由を子どもに

マリア・モンテッソーリは、子どもに自由を与えることを繰り返し強調しました。子どもに『自由』を与えるべき理由は、こどもの特性にあります。(リラードの解釈より、片山忠次 自由をこどもに9号)

①こどもは自分の力で努力することを惜しまない。
②興味にひきつけられて注意力を集中する。
③こどもは意志のはたらきを持っている。
④本物で、現実性のある環境での実体験、たくさんの経験を重ねることで創造力を発達させる。

自由な環境の中でこそ、こどもは持っている能力を最大限に活かし、自らを成長させていくのです。その自由は規律と表裏一体で、『秩序』があり、放任とは全く異なるものです。自由な雰囲気の環境の中には、空間の秩序(いつも同じ場所に同じものがある)、時間の秩序(一日の流れのリズムが一定である)、自然・宇宙の秩序(季節が感じられる環境、生き物のいる環境)があり、美しく整えられています。

こどもは多種多様な子ども社会の中で育つ

こどもにとって必要なのは、多種多様な人間のいる子ども社会です。年齢や性格や能力の違う様々なこどもたちが、それぞれの興味関心に引き寄せられながら、その中で「いろいろな人がいること」「憧れのモデルが近くに存在すること」「自分とは違う考えの人もいること」「好きな人もいれば、苦手な人もいること」「みんなでうまくやっていくために、どうすればよいのか考えること」「教えあい、助け合うこと」などを肌で感じ、全身で吸収していきます。人格形成の時期にあるこの子どもたちが、失敗したり、成功したりを繰り返しながら多様性を認め合い、教えあい、助け合う生活をすることで成長し、確固とした人格形成をしていきます。

環境による教育

モンテッソーリクラスは縦割りの異年齢子ども社会で構成されています。その他に、こどもの発達段階を熟知し、観察力を持って子どもから学ぶ教師(人的環境)と、モンテッソーリ教具(物的環境)などが大切な環境として存在します。教具には「日常生活の練習のための教具(生活教育)」、「感覚教具(五感の発達のために)」、「言語教具(話し言葉から書き言葉へ)」、「数教具(具体物を使った10までの数や十進法、順序数、加減乗除の計算など)」、「地理、生物、歴史の教具(コスミック)」があり、いつでもこどもが手に取って活動を始められるよう、室内の環境に秩序正しく、美しく準備されています。園庭は豊かな自然がこどもたちに命について、宇宙について教えてくれます。池があり、動物小屋があり、小鳥やモルモット、様々な昆虫や生き物が人間と共に地球上に存在し、それぞれが調和のとれた世界を保っていることを実際に経験し、人間も自然の一部であることを深く感じます。

モンテッソーリ教育の5分野

  • 1 日常生活の練習

    本物の生活道具が子どもサイズに整えられています。手を充分に使って楽しく生活しながら、体や指先を自分の思い通りに使えるようになっていきます。「一人でできる」という大きな自信が生まれ、自立心や独立心を育てます。

  • 2 感覚教育

    子どもは五感(視・触・聴・嗅・味)など全身の感覚を使ってたくさんの発見や感動を経験し、内面に蓄えていきます。体全体で体験したことが感覚教具により分類・整理され、豊かな言葉の土台を築きます。

  • 3 言語教育

    心をこめて正しい言葉で繰り返し語りかけることで、借り物でない自分の言葉を使える子どもに育てます。さらに「話しことば」から「書きことば」への世界へ導き、言語による表現能力を高めます。

  • 4 数教育

    数は日常生活において必要不可欠なものです。生活の中で様々な物を具体的に数えることから始まり、教具を使いながら抽象的な数の世界を理解していきます。

  • 5 コスミック(文化)教育

    日々の生活で育まれた自立心や達成感を礎に、子ども達の興味は次第に広い世界へと向かっていきます。地理学・生物学・物理学・歴史などの全体像を提供して、子ども達の視野を広げ、多角的なものの見方ができるように助けます。

本のご紹介

1979年の創立以来、赤羽惠子が深草こどもの家で実践してきたモンテッソーリ教育が、初めて一冊の本になりました。赤羽惠子の講演録やインタビューなどをもとに、モンテッソーリ教育のエッセンスを豊富な実例とともにご紹介しています。モンテッソーリ教育に興味をお持ちのお母様方はもちろん、幼児教育に関わる多くの方々にお読みいただきたい本です。

書籍情報
『自分で考え、自分を育てる モンテッソーリ教育」
~日本人初のモンテッソーリ教師・赤羽惠子
「深草こどもの家」30年のメッセージ~』

赤羽惠子 著、友好学園「深草こどもの家」後援会 編
北斗書房 刊(定価:1000円+税)
> 本書の詳細はこちら。(PDF・305KB)