16.09.14

園の日常

ともだち

文:長谷川美枝子

「せんせい、チュッチュとって、〇〇君にあげるの」
バスの中でちいさい3歳の男の子がいいました。
「チュッチュって何?」
と聞き直すと
「このなかに、はいってるから」
と、自分のカバンをさしました。
狭い座席で、カバンの中から何かを出したいけれど出せないようでした。
「チュッチュって何のこと?」
カバンを開けてあげて、中を見ましたが何のことかわかりません。
「ティッシュのことだよ」
側にいた年長児が教えてくれました。
「〇〇くんにあげるから」
と、年少児はまた言ってカバンの中を覗き
「あった!」と嬉しそうに自分のティッシュ入れをだしました。
もうすぐ同じ3歳児の〇〇君のバス停に着きます。
「〇〇くんがないてたら、これでふいてあげるの」
3歳の男の子は言いました。
〇〇君は前の日、朝バスに乗るときにお母さんと離れたくなくて泣きました。だからもし今日も泣いていたら、涙をティッシュで拭いてあげるというのです。
〇〇君のバス停に近付くと、もう泣いている声が聞こえました。年少児の言葉で、バスの中の子どもたちはみんなティッシュを片手に準備して待ち構えています!
「おはよう!」
〇〇君は泣きながらバスに乗りましたが、涙を拭いてもらって、泣きやみました。
「〇〇くん、だいすき」
ティッシュを差し出して、3歳男児が言いました。
みんな、とても嬉しい気持ちになった朝でした。
次の日、〇〇くんは泣かずに、元気にバスに乗りました。
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