21.11.30

園の日常

話し合い

文:長谷川 美枝子

年長のA君が目に涙を浮かべて部屋に帰ってきました。大丈夫?ときくと、
「○くんたち7人にやられたんだ」といいます。
「どうしてそんなことになっちゃったの?何か怒らせてしまったの?」と聞くと、
「ぼくがさいしょにやったんじゃないのに、みんながぼくが先にやったっていうんだ。」
何かしてしまったことは確かなようですが、話が見えてこないので
「どうして、そんなことになったのか、はなしてみようか?私、手伝いましょうか?」と聞くと、「こっちきて!」と言います。
竹藪にいる仲間たち7人のところへ向かう途中で二人の女の子が涙目でかけてきました。
「せんせい、Aくんが背中をたたいたり、わるぐちいったりしてくるの。それでわたしたちおこっているのに、さいしょにやったのはA君なのに、やってないってうそつくの」
竹藪にある、秘密基地(藤の蔓を竹に巻き付けて作った場所)に着くと、もうすでに先ほどの二人の他に5人が、ものすごい勢いでA君に対して怒っていました。
「A君、どうしてそんなにいやなことをいうの?」
「それにたたいたり、けったり!」
「そんなことばっかりするんだったら、もう、ともだちやめるぞ!」
A君は、つい遊びで、冗談のつもりで言ったことが、みんなにとってはとても嫌なことだったそうで、それで怒ったらA君が叩いてきて、みんなもまた怒って・・・ということだったようです。
A君は、はじめこそみんなに言い返していましたが、だんだんに背を向けて、竹にもたれかかり、だまって考え始めました。他の7人はまだ言い足りない、というかのように、口々に自分たちの怒っている気持ちを言葉にしています。
先生は、「みんなも思っていること、言いたいこと全部言ったようだし、いまA君は考えているから、もう今からは言わないで、すこし待ってあげてくれない?ちゃんと考えてくれると思うよ」とお願いして、他のこどもたちのところへ行きました。

しばらくして、さっき大喧嘩をしていたA君と友達たちがとても仲良しになって一緒に部屋に帰ってきました。なんと、お弁当を一緒に食べる約束までして、楽しそうに食卓を囲んでいます。
あのあと、どうなったかは聞いていませんが、A君がみんなに謝ったのか、みんなが許してあげたのか、いずれにしても良い話し合いができたのだと思います。

自分たちで解決できるこどもたちは本当にすごいなと思います。
自分たちで解決するためには、こういう機会がたくさんあること、お互いによく知ることも大切です。
これが、初めて会った人だったらどうだったでしょう?
「嫌な人!もう二度と会いたくない!」というふうになってしまうかもしれません。こどもたちは異年齢混合の縦割りクラスで、3年間クラス替えなく一緒に過ごしています。
A君は言いすぎてしまったこともあったけれど、こどもたちはA君の良いところもちゃんと知っていて、だからこそ仲直りができるのだと思います。こどもが自分で考え、感じ、自分で行動できるように育つには、そういった生活ができる「自由な学びの環境」を与えなければなりませんね!

引用元;
https://www.facebook.com/fukakusakodomonoie/posts/1815973068590824