24.09.08

園の日常

こどもの社会性は、多種多様な子ども社会の中で、自由な中で発達していく

文:長谷川美枝子

社会性の発達

4歳を過ぎ5歳6歳の頃は他者との関わりが活発になり、こどもの社会性がぐんと伸びていく時期に入っていきます。上手くいかないこと、思い通りにならないことや、それを乗り越えたり解決法を自分たちで見つけていく経験をして、自分を信じ、周りの人も大切にして平和をつくりだす心を子どもが自分で育てていきます。この時期に多種多様な人々の中で社会性を育む経験の場を与えることは幼稚園、保育園、こども園の大きな役割です。

ある日のエピソード

お弁当時にトラブルが起こりました。一緒に食べる約束をしていた仲良しの年中児3人。でも遊びから帰ってくるのが遅かったために3人で座れる席がもうありませんでした。(深草こどもの家の食事の席は自由席です。自由席には高度な社会性が必要になります。なので年少児はこの限りではありません)すると3人のうちの2人の男の子が4人席に空いていた二つの座席にさっと座ってしまいました。カバンからお弁当を出して用意しています。3人で座れる席を一生懸命探していたもう1人の女の子はそれを見てびっくり。一緒に食べようと楽しみにしていたのでしょう。大きな声で泣き始めました。

2人は気まずそうな顔をしながらも黙って食べる準備を続けています。女の子はますます大きな声で泣きました。先生が「どうしたの?」と声をかけると、

「一緒に食べるって約束したのに」
と泣きながら答えました。

「困って泣いているからお話ししてね」先生が言うと、

「またこんどいっしょにたべようよ」
「はやくすわればよかったんだよ」

2人は口々に言いました。

そう言われてますます大きな声で女の子は泣き続けました。「また今度食べようって言ってるけど?」と聞くと首を大きく横に振ります。「かなしいね。一緒に食べたかったんだよね。どうしよう」先生はこどもたちが一体どうするのかなと、見守るしかありませんでした。

すると、しばらくして2人のうちの1人がいいました。

「ここでたべていいよ」

そう言うと、自分のお弁当箱や水筒を別の席に持っていきました。泣いていた子はピタッと泣くのをやめて、それは想定外の言葉だったかのように驚いた顔でじーっと席を譲ってくれた子を見つめています。

「本当にいいの?⚪︎くんも一緒に食べたかったんでしょう?」と先生が聞くと、⚪︎くんは

「うん、いいの。またこんどいっしょにたべればいいし」
と言いました。

しばらく⚪︎くんを見つめていた女の子は小さい声で
「ありがとう⚪︎くん」
と言うと鏡の前へ行き涙を拭いて、その後お弁当を食べる準備を始めました。

今回は1人の子が席を譲るということでこのトラブルは終わりましたが、また同じようなことがきっと起こるでしょう。その時に今度はどんな解決方法を彼らが見つけていくのか、楽しみにしながら見守っていきたいと思います😊

* 教師があらかじめトラブルが起こらないように設定する事は場面によっては必要があるかもしれませんが、あまりにも教師が全て設定して決めてしまうと、こどもは考える機会を奪われます。失敗から多くのことを学びます。
*「自由」にすると言う事は規律や平和を子どもたちが自分たちで毎日つくるという、高度な社会性が育つ場が沢山あると言うことです。
* 教師の役割は、喧嘩やトラブルの回避ではなく解決へ向かう育ちの援助です。

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