16.12.14

園の日常

自分で決める

文:長谷川美枝子

深草こどもの家では、お弁当を食べる席は3人席いくつ、4人席いくつ、という具合に登園したこどもの人数に合わせて当番が準備し、そこへ子どもたちが座る席を自分で決めて座っています。誰と何人席で食べるかで揉めることもしょっちゅうですが、これも毎日の決断する力、解決する力、コミュニケーション力をつける大事な練習です。

「一緒に食べようね」と約束したら、約束は守るべきですから、いい加減に約束してはいけませんし、うっかり約束を忘れてしまったら相手を悲しませることになります。また、ぼんやりしていたら先に席を取られてしまって、バラバラの席しか空いていなかったということもあります。

自分から誘うことがなかなか難しい人もいます。でもいつも誰か誘ってくれる人を待つだけも寂しいものですから、3年間の中で少しずつ「一緒に食べよう」と言えるようになっていきます。

ある日、
年長の男児三人対一人で、同じく年長児の〇君をめぐって、座る席でもめていました。
この三人はこの頃◯君を入れた四人でいつも一緒にお弁当を食べていました。一方の一人は今日は自分も◯君と食べたいと訴えています。四人席と二人席でどっちに◯君が座るか話し合っています。3人が1人に「ジャンケンできめようぜ」といいました。「そうだな」と1人がいいました。◯君は黙っています。先生が「◯君はどうしたいの?」と聞くと◯君は「どっちでもいい」と答えました。「そんならやっぱりジャンケンできめようぜ!A君とB君でジャンケンして」と興奮した年長男児たちでジャンケンが始まりそうになったので、先生はもう一度◯君に「これは◯君のことだから、◯君が自分で決めた方がいいと思うよ。◯君は誰と食べたいの?」と聞きました。すると、今まで興奮した他の男児達に圧倒されていた◯君がじっくり考え始めました。そして、じっくり考えた後に3人にいいました。

「なぁ、おれたちいつもいっしょにたべてるだろ?きょうはおれ、Bくんとたべたい」

すると3人は今まで大騒ぎしていたのが嘘のようにしーんとなって「わかった」といいました。

その中のひとりは少し涙ぐみましたが「またいっしょにたべればいいしな〜!」と自分を励ますように呟いて席に戻りました。

自分の思いばかりでなく、◯君が「自分で決めた」ことを尊重してあげられるこどもたちをすごいなと、思います。そして、◯君も自分の考えをちゃんと伝えることができて良かったな、と思いました。

毎日、毎日、子どもたちは心をつかって練習しています。

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