22.02.26

学校法人化

こどもが尊重され、自由を与えられ、「良い生活」を営む園が全国に広まりますように

文:根岸美奈子 深草こどもの家園長 京都コース主任 学校法人設立準備会代表

この半年余りで、全国の皆さま方から驚くほどたくさんのご寄付をいただいておりますこと、心より感謝申し上げます。京都モンテッソーリ教師養成コース付属の深草こどもの家を学校法人化することで、全国の園の環境を良くしていくことに必ず貢献できると思います。

深草こどもの家:一人ひとりがその子らしく個性豊かに

今から30年ほど前に、私は深草こどもの家を一週間ほど見学しました。その時、子ども達の姿にびっくりしたのを今でもはっきり覚えています。それは、「変わった子どもが多いな」と感じたことでした。

それまで私は、4カ所の公立幼稚園でクラス担任や子育て中は教育補助員として、子ども達と関わっていました。同年齢の子どもたち約40名が同じクラスで生活し、基本は自由保育とうたっていましたが、毎日必ず設定保育があり皆同じ事をします。

自由な時間は、室内では、大きなブロック、ままごとコーナー、自由画帳に絵を描く、外あそびでは広い平らな庭で、固定遊具、砂場、ボール遊びやかけっこなど、楽しく遊んでいましたが、その「自由な選びのある時間がとても少ない」のです。それでも自由あそび中心と、どの園も方針を掲げていました。

いつの時代でも、幼児クラスの中には、とてもお利口で先生が指示する方向にすぐ向いてくれる子もいますし、又、こちらの意図とは全く関係なしにトラブルをおこしたりする子もいます。そして、ほとんどの子どもは、とりあえず先生の言うことは聞く、皆と一緒に行動する普通の子どもです。実はその頃の子どもたちには本当に申し訳ないのですが、30年経過した今、大勢のいわゆるふつうの子どものことについて、どんな性格、どんな子どもであったかなど、ぼんやりとしか思い出せないのです。

誰かに指示されるのではなく、自分の意思で

深草こどもの家に関わるようになってから、「変わった子どもが多い」と私が感じたことは、どういう事なのかということがわかりました。それは、一人ひとりの個性がはっきりとあらわれているということなのです。たっぷりな自由な時間の中で、何をして遊ぶか、誰と遊ぶか、どこで遊ぶか、いつ遊ぶかという事を、毎日毎日、くり返しくり返し、練習しているのです。

午前中いっぱい虫さがしに夢中になる。お座敷ではたおりをずっとつづけている。おり紙を何枚も何枚も折っている。ホールで電車の線路であそぶ。保育室、ホール、園庭と、どこでも、いつでも遊んで良いのです。誰かに指示されるのではなく、自分の意志で決めて遊ぶのです。この時に大切なのは、選べる物があるという事です。保育室内には、モンテッソーリ教具はもちろんの事、絵具を使って絵を描く。モルモットのえさをつくる。季節ごとの制作のコーナー。おり紙も丁寧に使うのであれば枚数制限はしていません。外では、砂場への水は使って良い。(砂場への水の使用禁止の園もあります。)走りまわれる園庭。かけっこ、なわとび、鉄棒。いろいろな草花、実のなる木。小動物の存在。この環境の中で、一人ひとりが好きな事を好きなだけできるのです。このような生活を毎日つづけることによって、その子の好きな事がよく見えてきます。何をしたいか決められない子どもには、もちろん誘って一緒にやってみます。

先日、保護者の方との面談を保育時間内にしました。子どもの様子を見ながら、お話を伺ったり質問に答えたりするのですが、保育室内の2階に見学席があるので、へや全体の様子がよく見渡せるのです。

私は、2階席から子どもたちの様子をじっくり見たことは余りないのですが、あらためて見ると、本当に、一人ひとり自分で選んだことを自由に過ごしている様子が良くわかりました。

京都モンテッソーリ教師養成コースの学生さんが一日見学した後に、「本当に、一人ひとり自由に過ごせていてうらやましいです」「自園では、なかなかここまで自由な生活をするのは難しい」とおっしゃいます。

本当の意味での「自由」をこどもに

現在、モンテッソーリ教育とうたっている園はたくさんありますが、深草こどもの家のように、室内、園庭を、いつでも自由に行き来したり、自由にすごす時間が長いところは、とても少ないときいています。モンテッソーリ教育で最も重要な自由の中で子どもたちが生活し、自己選択し、やがて自立から自律の生活ができることはとても重要です。

小学校以上の学校教育に関しては、皆さん非常に関心を持って、今新しい学校が次々に設立されたり、これから設立されるという動きがたくさんあります。しかし、幼児の教育に関しては、自由に楽しく過ごせればよいのではないか、というぐらいの認識の方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

0~6歳の人間の基礎を創造する大事な時期をただ単に自由に、楽しくだけで良いのではありません。「楽しく」はとても良いと思いますが、「自由に」というところで「自由」の取り違えが起こってきます。私たち大人は、一人ひとりの子どもたちに寄り添って、その子がひとりで出来るようにお手伝いをします。その子が自立して本当の「自由」を手に入れるために。「自由」の理解は少し難しいかもしれませんので、繰り返しブログで書いていきたいと思います。

 

深草こどもの家での生活(こどもが尊重され、自由を与えられ、”良い生活”を送ること)が、日本中のこどもたちのあたり前の生活になるように

現在、深草こどもの家/京都コースは、学校法人化を目指してプロジェクトを進めております。

全国から学びにきている学生さん(現役の先生方)の所属園が、少しでも子どもたちに良い援助ができるように、子どもたちの環境が豊かになるように、日本中に広めていきたいと思います。学校法人化は絶対に達成する覚悟で日々努力しております。

この半年余りで、皆さま方から驚くほどたくさんのご寄付をいただき感謝申し上げます。目標額の17%の達成しました。まだまだひとりでも多くの方々にご賛同いただきたく、ひきつづきご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。またどなたか多額のご寄付につながるような方をご紹介いただけましたらとてもありがたいです。

全国からのご寄付 2022年2月17日現在寄付状況のお知らせ

 

*寄付金の総額は、公益財団京都地域創造基金に頂いたご寄付と直接学校法人設立準備会へ頂いたご寄付の総額です。(2022年2月17日現在)

https://www.plus-social.jp/project.cgi?pjid=112