22.12.21

園の日常

自分の行動を振り返る。正しい方向へ伸びてゆく

文:長谷川美枝子

今年度からこどもの家に新卒の先生が来ました。こどもたち、特に年長児は、自分達の方が先輩だと言わんばかりに、4月から色々なことを教えたり、またこの人はどこまで許容してくれるかなと試したりする姿が見られました。新任の先生は戸惑ったり、迷ったりしながらも誠実に真摯に向き合い、子どもたちとの信頼関係を築いています。

11月のある日のこと、その日は午後から年長児が聖劇の練習をするために集まっていました。年長児A君はその時に楽しくて仕方がなかった毛糸の三つ編みの仕事を途中にして、劇の練習に参加しました。練習が終わったら続きをしようと決めて担任の先生に声をかけていたようです。

しかし、劇の練習が終わると、もう帰りの集まりの時間になっていました。A君はちょっと焦りながらも、毛糸の三つ編みの続きを出してきて始めました。そこへ新任の先生が来て、「もう集まりが始まるから、今からは新しいこと始めないよ」と伝えたところ、A君は新任の先生に対してものすごく怒りました。

「何にも知らないで、なんでそんなことを言うんだ‼︎」

主任の先生が来て、A君は教室の端に行き三つ編みを続けました。主任の先生は「そんな風に怒らなくても、お話したら大丈夫なんだよ」とだけ伝えました。

新任の先生が伝えたことはクラスのルールです。でも新任の先生はA君に対していきなりやめさせるような言い方をするんじゃなかった、邪魔にならない場所を伝えればよかった、などあれこれと思いを巡らせて反省していたそうです。

次の日の朝。
A君は毎朝割と興奮気味に登園して、一周走ってから支度を始めるようなお子さんですが、その日は新任の先生と挨拶すると側で静かに支度を始め、ハンガーに上着をかけたところで、言ったそうです。

「せんせい、きのうはごめんな」

新任の先生は自分の方こそ、謝らなくちゃと反省していたのに謝られてびっくりし、どうして?と聞くと、

「せんせいは、ぼくがおこってあばれたの、みたことなかったから、びっくりしたやろ?ごめんな。」

と話したと言います。A君、小さい頃はよく泣いたり暴れたりして抱っこされることがありました。でも新任の先生にはそんな姿を見せたことがなかったこと、初めて新任の先生に対して怒ってしまったことを後悔し、反省していたそうです。

「こんどからはおこらないで、はなすようにするね。」

そして、A君は自分は毎朝やりたい事を決めて1日を過ごしているという事を新任の先生に教えてくれたのだそうです。

なんて素敵な会話でしょう。私は自分の言葉で心の内を説明してくれたA君にも、A君にこのような心の成長の機会を作った新任の先生の謙虚な姿勢にも感動しました。

自分の行動を振り返ったり、自己コントロールできるように育つためには、自由と規律があり、そしてなんでも話せる雰囲気の環境が必要です。子どもたちはそのあたたかい環境の中で何度も繰り返し練習して、自分でできるようになっていきます。全ての子どもに、成長するために最も相応しい『良い環境』が必要です。

*写真は感覚教具の赤い棒をする年少児4歳。長さの順に並べるいろいろなバージョンを自分で考えて作ります。

 

深草こどもの家Instagramの記事から

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