21.12.25

学校法人化

人生100年時代、100年後も幸せであるための教育を目指して

文:根岸 美奈子(学校法人設立準備会代表/深草こどもの家園長/京都モンテッソーリ教師養成コース主任)

今年も残すところあとわずかとなりました。この一年、たくさんの方々のご協力で、プロジェクトをここまで進めることができました。感謝の気持ちで一杯です。私の想いを綴らせていただきます。

人生100年時代、100年後も幸せであるためには、
子ども自身の視点を中心に、毎日ていねいに生活すること。
たっぷりの自由な時間の中で、身体を使い、心を使って自分の頭で考えること。

この教育を持続発展させる為、長年の悲願であった、深草こどもの家/京都モンテッソーリ教師養成コース(以下京都コース)の学校法人化プロジェクト寄付活動が2021年8月に本格始動致しました。
寄付のお願いをしましてから4ヶ月という短期間に、しかもコロナ禍で厳しい状況にも関わらず、全国からたくさんのご寄付と熱い応援メッセージをお寄せいただき、嬉しい驚きと共に、なんとしても実現させるという想いを強めております。

学校法人化プロジェクトのいきさつ

3年前、40年以上の実績が認められ、京都府と学校法人認可に向けて協議が始まった際には、これでいよいよ夢が叶う!と思ったのも束の間、実現には高い高いハードルが待っていました。

  • 法律の制約上、園舎の一部改修に止まらず、建物を全て取り壊し、土地整備から始めなければならない。
  • 少子化の時代、園同士が競合する為、市内で移転することはできない。
  • 40年以上国からの補助金一切なしに、私財を投じて経営してきたので巨額な資金の蓄えもなく、しかも認可審査の際には借入金がゼロでなければならない。
  • 交通の便が悪い為、保育園(社会福祉法人)への転換は認められない。

八方塞がりで、何をどうしたらいいのやら…。すっかり困り果てていた私達に前を向かせてくれたのは、日々成長する目の前の子ども達の姿でした。
半世紀近くに渡り、子どもから子どもへと受け継がれてきた深草こどもの家の歴史をここで絶やすわけにはいきません。

何が何でも次世代に繋げなければ!!!

資金集め、園舎の設計、土地整備、行政との交渉、仮園舎探し、広報活動・・・。
これら全てを同時進行で行わなければならず、しかも毎日の保育、京都コースにシワ寄せがいくことは許されません。
只々教育一筋に生きてきた私達には全く経験のない事をやらなければならない事態に不安を感じておりましたが、少しずつ良いご縁に恵まれ、何とかここまで辿り着くことができました。
建築士、会計士、ファンドレイザーを始めとする専門家の皆様のご協力を仰ぐことが叶い、保護者のボランティアの皆様も日々貴重な時間を削ってご協力下さっています。この場をお借りしまして御礼申し上げます。

モンテッソーリ教育の理想型

深草こどもの家は、京都の中心部からほど近い場所にあるにもかかわらず、山に囲まれ緑いっぱいの環境に恵まれています。
園舎を囲む自然を生かした複雑な園庭と室内とのバランスは、モンテッソーリ教育における理想型だと、海外からも高い評価を受けています。
それは、モンテッソーリ教育の基本に忠実であり、「一人一人違う子どもにとってどうあるべきか」を常に問いながら、室内だけでなく園庭の環境を整えているからだと自負しております。
人間にとって自然は不可欠です。
特に子どもは、教室のような閉じた空間だけでは心や精神を充分に成長させることができません。風を感じ、光を浴びて、いたる所に生き物の気配がする大きな空間とを絶えず自由に往来する必要があります。
どろんこになって砂遊びをしたり、虫探しに夢中になって部屋に戻ってくる子ども達の顔は、満足しきった表情でいっぱいです。

普遍的な人間のこどもの育ちから学ぶ

京都コースは、全国から集まった現場の教師達が2年かけて理論と実践を学びます。心の赴くままに園全体の環境を使いこなし、誰からも指示を受けずに一日の生活を組み立てていく子ども達の有り様に大きく心を揺さぶられ、子どもから学ぶとはどういうことか、考えを深めていきます。そしてそれぞれの教育現場で、高い志を持ってより良い教育を提供できるよう奮闘しています。

「保育、子育てが楽しくなった。」
「人生が大きく変わった。」
「これから生まれてくる子ども達のためにも絶対にここを残したい。」
「豊かな幼児期を過ごしました。」
「我が子にもこの教育を受けさせたい。」
「幼児期にこの教育を受けられたことは人生の宝です。」
「楽しかった思い出が溢れてきました。子どもの自主性を重んじた精神がずっと続くことを願います。」
卒業生、卒園生からたくさんのコメントを頂いています。

グローバル化、コロナ禍で近年教育現場は変化ばかりを求められていますが、
「変えてはならないこと」があるはずです。
特にバーチャルなことが身の周りに溢れかえる時代だからこそ、不思議なことを“どうして?”と考え始める幼児期に、四季折々の多様な自然と存分に関わり、自分の命だけでなく他者の命も尊重できるような人格形成の種まきをしてあげたい。
「自然は生命について教える教師である」とM.モンテッソーリは言っています。この自然を調和のとれた状態に保つことが、私たち人間に与えられた使命です。
幼児期に深く土を耕せば、将来自己を支える根っこを強く広く張り巡らせることができる。
これは遥か昔から続く人間の成長の自然な営みであり、これからも変えてはならないことだと思うのです。
40年以上続いてきたこの理想の環境を100年後も!
その一方で、土地整備を含む巨額の費用を寄付で募るという大胆なプロジェクトに躊躇する声があるのも事実です。私達もはじめはもの凄く迷いました。
しかしながら、理想にこそ現実を変えていく力がある。子ども達の成長は勿論のこと、子ども達から学んで自分を変えていった多くのコース卒業生達の活躍が、その証です。

どんな子どもでも受けられる教育に

皆様の未来への想い、願い、希望を集めて、学校法人として正式に認可を頂き、公の教育機関としての責務を果たして参ります。
これまでは認可外ということで一部のご家庭に限られていた側面がありましたが、モンテッソーリ教育の人気に加え、幼児教育無償化が始まり、深草こどもの家の入園希望者が近年急速に増えています。京都コースの入学希望者もすぐ定員になり、お断りせざるを得ない状況が続いています。学校法人化によって受け入れを拡充できれば、ここで学ぶ保育士、教師を通して、もっと多くの全国の子ども達にこの教育を届けることができます。

「いちばん良いものを全ての子ども達に」

皆様のお力添えに重ねて御礼申し上げます。
引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
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