お弁当は自由席です。
コロナ前は、テーブルを囲んで4人席、6人席、と向かい合って食べる席がありましたが、コロナ後は対面での食事を避けるために、一方向を向いた座席をつくるように変わりました。それに伴い、お弁当のお当番が準備する食事の席も、その日の人数によって、一人席~四人席まで、並んで一方向を向くスタイルに変更しています。当番の人が、その日の人数分の座席をつくりやすいように、「みんなで何人、何人席がいくつ」といったカードを用意しています。
ある日年長の男の子が、お母さんに相談したそうです。「○ちゃんとたべたいんだけど、○ちゃんは人気があって、○ちゃんといっしょにたべたいひとがたくさんいて、ぼくもたべられないことがあるし、だれかがいつもかなしいおもいをするんだ。もっとみんなでたべられるようになればいいのに」
お母さんから話を聞いたので、直接本人に聞いてみました。
「何か、お弁当の席で困っていることがあるって聞いたんだけど?」
「カードにかいてあるのは4にんせきまででしょう?でも5人でたべたいひもあるし、そういうときはだれかがひとりぬけないといけないのはかなしいんだ。ふたりと3にんにわかれるっていうのもいいかとはおもっているんだけど。」
「Bくんの考えは大事だと思うから、他の人たちがどう思っているか、帰りのあつまりで聞いてみよう」と提案し、みんなにも聞いてみました。
<帰りの集まり>
「じつはさ、こまっていることがあるんだけど、5にんとか6にんとか7にんとかでたべたいときに、その席がなくて、ざんねんだなっていつも思っているんだ」
Bくんがいうと、
「そうだよね!そういうときあるよね!」とみんなが共感しています。
「5にんだったら二人と三人で分かれるとかもいいね」
「だけど、5にんでいっしょにたべたいときはどうしたらいいんだろう。」
「がまんするしかないんじゃない?」
「ゆずってあげる」
「でもないちゃうこともあるよね」
こどもたちが、カードに書いてある席が「決り」だから、それをまじめに守っているということ、そして時に不都合なこともあり、困っているということがよくわかりました。
こどもたちはとっても真面目!
「当番がせっかく用意してくれた席だから、勝手に増やして、席があまったり、最後に片づけができなくなったりするのは困るけれど、作ってくれた席を数えて、移動するのは、いいんじゃないかな?」
こどもたちの目が驚きに変わりました。
「え?!いいの?!じゃあさ、4にんせきにふたりせきをつなげて、6にんせきをつくってもいいってこと?」
「机がたりないときはどうしたらいいの?」
「おりょうりのときみたいに、他のへやからかりてきたらいいんじゃない?」
「えー!それすごい!いいね!」
「でもその場合には、新しく二人席をつくったら、お当番がつくってくれた二人分の席を片づけないといけないね。そうやって、きちんと片づけができるんだったら誰も困らないし、いいんじゃないかな?」
「うん、そうしようそうしよう!」
次の日。
Bくんを含む年長児が、当番が作った席をせっせと移動し5人席をつくろうとしていました。
「あとひとつ、席がたりないな。そうだ、お座敷の席をかりよう!」
1人の子がお座敷から座卓をもってきましたが、みんな難しい顔をしています。ひとつだけ座布団席になり、高さがちがって、とても『みんなで一緒』という感じではありません。
結局、一つちゃぶ台を借りることになり、みんなご機嫌で席につきました。
「よっしゃー!」
Bくんがガッツポーズをしました。
自分たちで意見を出し合い、みんなのことをみんなで決めていくということは、まさに民主主義そのものですね。
共同体で他者と一緒にいきる。自分も他人も尊重し、それぞれが自分らしくいられる方法を考えていく。それはこどもたちの個人の人生にはもちろん、社会にとっても良いことです!
「きまりだから」と考えずに諦めるのではなく、「どうすればいいんだろう?」と考える力は周りを変えていきます。
自分たちで決めたお弁当の席
引用元;